Yomoc

4D vision

Instagramでアップしてる写真のことをちゃんと話したことがないので書いてみよう、と思い立ったので書いてみました。つらつらと書いている間に気温が2ヶ月戻ったり2ヶ月進んだりして「今」という感覚が揺さぶられる面白い体験をしちゃったんですが、それはまたいつか思い出したら書くとして。
Instagramの写真について書くくせに、まだYomocにプロフィールとかSNSリンクを掲載してないなって気付いたんですけど、まぁそれも、それとして。

Height Width Depth Time

4次元といえば例のポケット、というくらいにこの国では四次元という言葉は定着していますよね。縦・横・高さの3次元に時間軸を加えたものが4次元、くらいは知られているものの、じゃあ具体的にどんなものなんだろうって考えるとなかなか疲れます。

1次元・2次元っていう下の次元の説明はとても簡単ですが、3次元において上の次元である4次元を認識するのは結構難しくて、誰もがすぐそこに見出せるものではないし、ましてや触れるものでもないので、これはもう理論で認識していくしかないってなってるのが物理学の先端の世界です。

How to be seen by eyes

物理学の話になるとすごい長くなってしまうので割愛しますが、人間の目には映らない4つめの次元がもし見えていたらどうなるのか、それがインスタに上げてる作品のコンセプトです。 時間軸と空間が相互に入り混じり、全ての継続性と可能性がそこに共存している景色。
っていう話を始めると今度はパラレルワールドとか世界線とかの話になっちゃいますけど、過去の世界って今この瞬間までの結果の集合ですよね。
今までの選択、行動、それらすべての継続性が記憶として人の脳に蓄積されて、過去という世界が認識されていくんだと思うんです。

Where the time from

人の脳って記憶の断片一つ一つは実は継続性を持っていなくて、それを思い出す時に前後関係を紐付けて整理するようで、その紐づける行為こそがまさに時間が生まれるところだって説を読んだ時には時間って実は存在していないのかなと思ったものです。
でも素粒子を紐解いていくと彼らも時間経過によって変化しますし、完全にスタティックな存在というのはまだ人間の認識する範囲にないことから、時間という概念は実存するものだと考えています。

Coexist of all possibilities is the future

じゃあ未来ってどうなっているかというと、タイムマシンを降りた世界のように一意で一定の未来というのはないと思うんですよね。
過去が結果の集合だとしたら、未来は今この瞬間以降取りうる選択、行動がすべて共存している世界なんじゃないかって思うんです。
そこには、いつも右足から履く靴下を左足から履く未来とやっぱり右足から履く未来とか、いつも通り右に曲がる未来とちょっとだけまっすぐ進む未来とか、物理的な制約はあるけれど、いま以降取りうる全ての選択肢が等しく共存している世界が、未来って呼ばれる景色なんじゃないかなと思うんです。

Visualization part1

その未来を可視化すると、例えば手が届く範囲の全ての空間に次の瞬間手が存在しうる、つまり千手観音みたいなイメージになるんじゃないか。
人であればその人が取りうる行動の可能性が同じレイヤーに共存しているんじゃないか、花であれば上から、横から、下から見た姿が等しく同じレイヤーに共存しているんじゃないか、そんなことをある日ふと思い付いたんです。

Who can see that

そんな世界が見えてたんじゃないかなって個人的に思ってるのが、対象をあらゆる角度・視点から見た上で、それらをキャンバス上にひとまとめに表現した、ピカソです。
キュビズムと呼ばれる彼の作風を最初見たときはなんだか奇妙だな、どうしちゃったんだろうって感覚だったんですが(今でもそういう認識はあります)時間とか空間とかを考えていくと、なるほど、あれは対象の存在の本質を描こうとしたものなのかもしれないって思うようになりました。

でも、千手観音像は42本の手で千手を表すという様式にハマっているので、ちょっと違うかもしれません。

Visualization part2

それはさておき、未来を可視化することは不可能なので、じゃあ今現在の写真を重ねてみよう。というのがインスタの作品のコンセプトです。
重なる写真が対象を同時に捉えているわけではないので(そういうのも作りたい)未来というより時間の連続性の集積なんですが、それを作ることで今現在ここに存在している可能性の共存を表現し、未来に起こりえる可能性の共存を想起したいなと思っています。

Restriction

で、このコンセプトを実現するに当たって、制約を設けています。それはスマートフォンだけで制作を完結すること。

素材は全てiPhone Xで撮って、それをPhotoshop Mixというアプリで重ねてあれこれしています。
もし撮影を一眼とかでやって編集をPhotoshop CCでやってたとしたら多分、もっともっとこだわっちゃうし時間も掛かるし、それってもはやインスタントではないんです。
やりたいけど。
インスタの作品は、何か対象を見つけた時に「いいな」とか「面白そう」って閃く感じなんです。これを作品にしたらどうなるんだろう?という感じで。
イメージのツイート、みたいな感じ。
その閃きってほとんどが些細な感情なので、それが消えないうちにささっと撮っておいて、重ねたりする調整もささっと感覚任せでやっています。
そうすると計算や理論思考が入る余地があまり生まれないので、写真を重ねた時の偶然生まれる「いい感じ」を言葉抜きにキャッチして、その点を繋いでいってアウトプットできるんです。


Hanae Mori manuscrit 2018SS

これはサイトを作っているHanae Mori manuscritの2018SSのコレクションに行った時に撮ったイメージです。ランウェイって写真撮りたくなっちゃいますけど、どうせいろんなメディアがこぞって掲載するから同じような写真じゃ意味がない、と思って重ねた1枚。最近のランウェイはエンディングになってもみんなスマホで撮ってるから、両手が空かなくて、誰も拍手しないんです。撮りたい気持ちは分かるけど、そのランウェイに向けてどれだけの労力が使われたのかを想像すると、自然と拍手が出る方がいいんじゃないかなーって思うんです。

Composition of metropolice

これはビルの解体現場。解体現場って都市の構成組織が見えるみたいで好きなんです。ビルの裏側の、時に幾何学的な配管とかも好きで、いつも目にするビルとか整ったファサードって都市の表皮だと思うんですけど、こういう配管とかむき出しになった鉄骨ってその裏側にある血管とか筋肉みたいで、これがあるからこそ整った表皮が成立するっていう表裏一体の関係だと思うんです。ということで、普段目にするものでもない裏側の世界なので色もちょっと振り切った感じでまとめました。

Diagonals building

これはビルの狭間で空w見上げた時に、そのシンメトリーな直線の交差が面白く感じて撮ったものです。立ったまま上を見上げて、ぐるりと回りながら角度を変えて撮っていくうちに、そうかこの直線を使えば図形が描けるぞと思い付いて作った1枚です。

After the Summer festival

これはお祭りの季節の、夜の時間を形に留めておきたくて作ったものです。お祭りの後って独特のぽかーんとした時間が流れてると感じるんです。ついさっきまで明らかに賑やかだった場所から誰もいなくなった、その空白感。でもまだ明かりは灯ってて、場所としてはまだお祭りの状態なんですよ。でも誰もないの。その場にしか漂わない雰囲気を表現してみたくなった、そんな1枚です。

KCJJ scenery

ごちゃごちゃした場所ってすごく好きなんです。東京にちらほら残ってる昔ながらの飲み屋街みたいなところが好きでよく行くんですが、これはその景色です。ただそのまま撮ってもごちゃごちゃしてていいんだけど、それならもっとごちゃごちゃさせてみようって、ただそんな気持ちだけでまとめた1枚です。

Flowering streams

これはここ最近の一番お気に入りな作品です。これは多分造花で作ったアーチみたいなオブジェなんですけど、その中で一番好きな色合いになる角度を探して何枚か撮って重ねて、重ね具合で緑色を出したりして仕上げた1枚。これはなんか、一つ一つの花のサイズとか色とかトータルで見たフォルムと色のバランスとか、全体的にしっくりとくる最近のベストです。

33rpm

ある日、空を見上げるとそこには大きな、3があったんです。風も吹いてたので急いでその3を撮って、あとから重ねて作った1枚。こっそり付けたタイトルは『33rpm』です。

Jicoo floating bar

東京湾に浮かぶ宇宙船のような船。松本零士さんがデザインを手掛けたことで知られる、フローティングバー、Jicooです。数ヶ月に一度くらいのペースでそこに呼んでもらって船上DJをやるんですが、その時に内装を何枚か撮って、特徴的な三次曲面とライティングを重ねてひとまとめにしてJicooとした1枚です。

Snowing lines

これは都内が大雪に見舞われた時の夜、しんしんと雪が降り積もる中を歩いてて、ふと雪が止んで、見上げたら電線に雪が積もってたんですね。いつも夜空にソリッドな電線が浮かんでる時は存在感がないのに、雪に包まれた電線のもふもふした存在感がなんだか面白くて撮っちゃいました。

Icho Exp way

毎年イチョウが散る季節になると、神社とか駅とかで落ち葉を掃除する方がおられますよね。でもここ、誰も掃かない場所だったんです。そんな、誰も掃かないところに積もるイチョウの落ち葉の色ってこんなにもキレイなんだってビックリして撮りました。その時ふと、こんな感じで撮る時の角度を変えて重ねるって方法を思い付きました。こうすると、まるでイチョウの高速道路の入り口みたいな景色が作れるんじゃないかって思ったんですが、やってみたらもうちょっと幻想的な、人生の分岐点みたいな1枚になりました。

餃子

最後の1枚は、コンクリートのような、削げ落ちたペンキの後のような、アブストラクトなイメージになっちゃってびっくりの、餃子です。美味しくて、つい。

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